私は幼い頃から自然博物史や動物に興味があり、そういった類の図鑑をながめたり、その中の動物の絵や写真を模写するのが、とても好きだった。
高校時代、私は片道5kmの山道を歩いて通う中、身近な自然を通じて、かくも人類は自然界より、物質面のみならず、精神面でも限りない恩恵を受け続けているのだとつくづく感じた。
またその時、私には、自然界の奥の次元には全てを調和せしめよう、全てを活かそうという大きな意志があるに違いないと思え、そう考えながら山道を歩いていると、不思議と大安心の境地になり、“至福の時”を過すことが出来た。
数年後、アメリカに渡り、主に西部の自然を見て廻ったが、日本の風土とは、かなり違っていて厳しく、自然環境というものは、そこに住む人間の生活のみならず、思考や精神面にも様々な影響を及ぼすものだと実感した。
そういう観点から日本の自然を見た時、私はその多様性と情緒の深さ、豊かさに改めて感心した。さらに自分の故郷である岩手県をながめてみると、現在もふんだんに残っている、優しくもスケールの大きな岩手の自然は、日本の自然の一部に違いないが、本州にありながらも大陸的な雰囲気も合せ持ち、とても魅力的である。
その事を再認識した時、私は北上川流域を目指し、江刺市に移り住んだ。
現在、身近な自然をテーマに、時には動物を入れたり、時には風景の一部を切り取ったり、また自然現象そのものを描いたりして、絵の創作活動をしている。
自然そのものをテーマに描く事は、私にとってとっても心地よい事であるし、私自身の自然に対する感謝の心を表わす行為でもある。
その目的は自然を描く事により、その根元にある、“真・善・美”を表現することだと思っている。そして多くの人達とこの調和した自然の素晴らしさを共有することにある。

●ほそかわこうしプロフィール
◆1957年 岩手県大東町に生まれる
小学校の頃から自然博物学に興味を持ち、動物の絵を描き始める。
◆1979年 アメリカ、ロサンゼルスに在住、ワイルドライフアート(野生生物生態画)を研究。
◆1993年 江刺市に移住、以後身近な自然をモチーフに創作活動を開始。
◆1996年 「宮沢賢治生誕百年記念」の絵葉書のイラストを担当。
◆1997年 「日米親善ロスアンゼルス芸術祭」に出品。
「首都圏胆江ふるさと会創立五周年記念美術展」に出品。
◆1998年 岩手日報社発行「ふらすこ」誌のいわて植物図鑑のイラスト担当中。
東京都国立市・コート・ギャラリーにて「グループ新未来展」を開催。
その後各所にて個展を展開している
◆五井平和財団賛助会員
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